江戸吉原グルメガイド 最大の歓楽街吉原は、観光地でもあり”グルメ天国”でもあった!
はじめての吉原ガイドブック
江戸最大の歓楽街でもある吉原は、多くの男女が訪れる観光地という側面もあった。吉原名物の土産を買い求める人も多く、有名な料理屋や菓子屋も立ち並んでいた。妓楼ではどんなグルメが好まれ、どんなものが食されていたのだろうか。その実態を紹介する。
■吉原は江戸最大の観光地でありグルメどころ
『新版御府内流行名物案内双六』(一英斎芳艶、弘化4~嘉永5)に、江戸の有名な料理屋や菓子屋など61軒が紹介されているが、「よし原 ゑび鶴」、「よし原 万久」とあり、吉原内の2軒の料理屋が取り上げられている。
吉原は遊廓だが、同時に多くの男女が訪れる江戸最大の観光地でもあった。そのため、有名な商家や名物も多い。
吉原でもっとも有名な菓子屋が、江戸町一丁目の角にあった「竹村伊勢(たけむらいせ)」である。
巻いた煎餅である「巻煎餅」と、あんころ餅の一種の「最中の月」で知られた。とくに巻煎餅は折詰にして贈答品に用いられた。
【図1】で、竹村伊勢の奉公人が箱詰めにした菓子を天秤棒で運んでいる。
かなりの大量注文といえよう。引手茶屋や妓楼が客に贈答品として配るのだろうか。

【図1】左下で天秤棒を担いでいるのが竹村伊勢の奉公人。『憎口返答皈』通笑著/安永9年(1780)刊、国会図書館蔵
吉原見物に来た男女も、吉原土産として巻煎餅や最中の月を買い求めることが多かった。
【図2】は、最中の月(上)と巻煎餅(下)の箱絵である。贈答品や土産を意識しているのがわかろう。

【図2】竹村伊勢の贈答用の箱絵。『花街漫録』西村藐庵著/文政8年(1825)刊、国会図書館蔵